小さい頃からずっと傍にいてくれた大好きな幼馴染。
一緒にいるのが当たり前だった。
『 いつも幼馴染の面倒ばかりみてて疲れない? 』
偶然聞いてしまった言葉。突然の衝撃に彼の答えを聞かずにその場から駆け出す。
面倒をかけてないと思っていない訳ではなかった。でも…傍にいてくれるのが当たり前すぎたから。
いつも『仕方ないな』と苦笑を浮かべて世話を焼いてくれる彼。
でも、本当のホントは迷惑なのかな?疲れちゃってるのかな?だったら…
ENDLESS LOVE 第1話
校舎に響く電子的な鐘の音。夕焼けのグランウドでそれぞれの部活に汗を流す若者達。
日中の賑やかな雰囲気とは対照的な静けさのある教室。廊下からはちらちらと声が聞こえてくる程度の放課後独特の雰囲気。
その中に彼、キラ・ヤマトはいた。
ぼんやりと窓越しに映るグラウンド見つめる姿は正に悩める少年といった風貌だ。
「 キラ 」
「 あ、ミリアリア 」
「 どうしたの?ぼんやり外なんて眺めて 」
「 何でもないよ、ただ… 」
「 キラ? 」
「 静かだなって思って 」
( アスランがいないと )
不思議そうな顔で見ているミリアリアに、ぱっと表情を明るくして何でもないよと笑いながら手を振る。
少し心配そうな顔をしていた彼女だったが彼氏であるトールを待たせていた為、キラの様子を気にしながらもその場を去る。
そして、再び夕焼けの広がるグラウンドに目を遣る。
「 アスラン… 」
口に出してしまったのは大切な幼馴染の名前。
彼とは小さな頃からずっと一緒だった。学校も遊ぶ時も親同士が仲が良い為、時には互いの家に泊まりに行ったりもした。
何かにつけてキラのする事に口を出す彼。口煩いと思うことも多かったが不思議と嫌ではなかった。
それは彼が自分の為に言ってくれている事がわかっていたから。
あの頃はずっとこんな感じで一緒に過して行くものだと思っていた。
しかし、高校進学の時それが一変する。キラがアスランとは別の高校を進学すると言い出したからだ。
アスランには受験ギリギリまで黙っていた為、彼にキラを止める事は出来ず二人は別々の高校に進学する事になった。
初めてのアスランのいない学校生活。自分が言い出した事なのにキラは不安で一杯だった。
今までアスランに頼ってばかりだった自分。そんな自分をキラは変えたかった。
( これからもアスランの親友でいる為にはアスランに頼ってばかりじゃ駄目なんだ )
だから離れてみた。アスランが傍にいると彼は自分の世話を焼いてしまうし自分の彼に頼ってしまう、それでは駄目だから。
この高校に入学した当初は人見知り気味だったキラだったが元々の人好きな性格もあって少しずつ友達も増え
一ヶ月が経とうとする今ではすっかり学園生活にも慣れてきていた。
それに姉であるカガリが彼を追いかけて同じ高校に入学した事もあってキラはそれなりに楽しい高校生活を送っていた。
ただ、自分の学園生活の中にアスランがいない事の寂しさは中々キラの心から消えてはくれなかった。
「 さて、そろそろ帰らないと 」
がたっと音をたてて座っていた椅子をひく。立ち上がって手早く帰り支度をするとキラは教室を後にした。
寂しいと感じるのも不安な気持ちも今までアスランに頼っていた代償。
それに…家に帰ればアスランがいる。そう、アスランとキラは互いの学校が実家から遠い為二人で暮らしていた。
キラにとってアスランと二人暮しは予想外の事だった。
アスランから離れる為に違う学校を選んだのに、アスランと二人で暮らすなんて…と当初は思ったりもしたが
正直、アスランが一緒に暮らしてくれるといった時は嬉しかった。
一人暮らしなんて実はやっていける自信がなかった。それに一人はやっぱり嫌だから。
高校生の自分達にとって一日の大半は学校で家にいる時間なんて余りないけれど、
朝と夜少しの時間だけでもアスランと話す事でその日一日の寂しさが埋まる気がしていた。
少しずつでいいからアスランと対等の立場になれるように…キラにとってそれがいまの二人の関係を続けていく事のできる方法だと信じていた。
「 よーし、夕飯は何を作ろうかなー 」
ぐんっと腕を伸ばして何だか所帯じみた事をいいながら夕日に染まる道を歩き始める。
「 今日はカレーがいいな 」
「 ふぇ? 」
突然かけられた声に間の抜けた声をあげてしまう。
くるっと振り返るとそこにいたのはさっきまでキラの思考の大半を占めていた人物、アスラン・ザラだった。
「 随分と遅かったんだな 」
「 アスランっ ! ! まさか待ってたの? 」
「 ああ、この時間ならキラまだいるかなって思って。それにキラが暴漢にでも襲われたら大変だ 」
「 またそんな事いって、アスラン過保護すぎだよ 」
「 キラは自覚がないから余計に危なっかしいんだよ 」
すっぱりと言われた言葉に内心ムッとする。そこまでぼけっとしているつもりはないんだけれど、それに自分は男だし。
「 自分は男だから大丈夫なんて思ってるんだろ? 」
思っていたことをずばり当てられてびくりと肩を揺らす。そんなキラの様子にアスランははぁーと溜息を吐く。
「 キーラ 」
ちょっと間延びした呼び方。これはアスランがキラを甘やかす時か説教を始める時の彼の癖みたいなもの。
そして今は明らかに後者の方だ。説教モードに入るとアスランは長い。
それを知っているキラはくるりとアスランに背を向けると駆け出していく。
「 こらっキラ!! 」
急に走り出したキラに驚いて声を上げるアスランから少し離れた所でピタっと足を止めると再びくるっと振り返って悪戯っぽい微笑みを浮かべる。
えへへっと笑っているキラの亜麻色の髪が夕焼けに染まっていつもとはまた違う印象を受ける。
「 だって大丈夫だもーん!!」
アスランが説教なれをしているとすればキラもアスランの説教から逃げなれていると言ったところだろう。
上手くアスランの意表を衝いて説教モードになりかけたアスランをかわす。
二人の当たり前の日常。
それは何より幸せな事。
二人はその後は何事もなかったかのように帰路に着き始める。
◆あとがき◆
はい。現代パロの本編(?)です。今まで番外編というか短編ばっかり書いていたので本筋みたいなのをそろそろ書こうかなと思いまして。
どうでしょうか?内心かなりドキドキしてます。良かったらご意見、感想お聞かせください★
このシリーズのキラは天然でアスランはキラベタ惚れの苦労症(酷)なのですが、キラだっていろいろ考えているんですって話です。
生活の節々はどこか抜けているんですけどね(笑)そして、キラはアスランの事好きだとか大切だとかいろいろ口走りますが
あくまで幼馴染、親友としての好きです。今のところ恋愛の感情は無い…という訳ではないですが。。。まあ、これからって事で vvv
あ、夕飯のメニューにアスランがカレーを指定したのは好物って訳ではなく(嫌いでもないですが)キラに料理のレパトリーが少ないからです。
キラは家事は下手って訳ではないですが苦手くらいレベルです。(微妙な)発展途上?かな?
アスランはお約束ですが得意ですね。もはやお母さんレベル(大笑)の人です。